【第 37 話】 杏仁 ◆1YN5ZdoG2w 様
『無題』
これは、私が高校3年の時に実際に体験した話です。
7月の終わりに差し掛かった頃。時間は深夜の1時。
そろそろ寝ようかと布団に入りました。
うとうととしていたその時、体が急に縛り付けられた感覚に陥り、全く自由がきかなくなってしまいました。
金縛りです。
これまで一度も体験したことがなかったので、(お!これが金縛りってやつかっw)なんて、のんきな事を考えて
いました。
それからしばらく、体が動かないという状況を半ば楽しんでいた時です。
コンコン、コンコン、、、
私の寝ている枕の上の方にある窓をノックする音が聞こえてきたのです。
(親かな?でもこんな時間に外から?おかしいな…)
依然として体が動かない私は、その音に不信感を抱きながらじっとしていました。
コンコン、コンコン…
再びノックをする音が聞こえてきました。
その音は次第に大きくなり、やがて、
ドンドンドンッ!ドンドンドンッ!
窓を思いっきり叩く音に変わっていました。
(窓の向こうに得体の知れない何かがいる…!)
私はそう直感しました。
さっきまでこの状況を楽しんでいた自分が嘘のように、一気に恐怖感が襲ってきました。
なおも金縛りは続いています。
私はどうする事もできないまま、ただただ部屋中に広がるその「音」に耐えていました。
………
音が止んだ。
と、その時、
ガラガラガラッ!
なんと窓が開く音が聞こえてきたのです。
私は心臓が飛び出しそうになりました。
そしてその「何者か」が、私の寝ている布団に近づいてくる足音が聞こえてきたのです。
(どうしようどうしようどうしよう…)
とてつもない恐怖で震えている私の方へ、そいつはゆっくりと近づいてきます。
………………
どれくらい時間が経ったでしょうか?
ものすごく長い時間が経過したように感じましたが、あることに気がつきました。
金縛りが解けています。
金縛りの間、恐怖でぎゅっと目をつぶっていましたが、うっすらと開けてみました。
そこにはなにもいませんでした。
あとあとになって考えてみると、これは金縛りになった際に聞こえてきた幻聴だったのでしょう。
その時はそんな事を考える余裕など全くありませんでしたが。
これが、私が唯一経験した心霊体験です。
【了】