【第 76 話】 mk ◆AUR35tiBoI 様
『花火大会の夜』
職場の上司Kさんから聞いた話。
数年前の夏のこと、仲間たちと花火大会を見に旅行した。
海辺で行われるその花火大会は大変な人出だが、Kさんたちはその人混みからちょっと離れて、
近くの小さな山の上に宿をとり、花火はその山の中腹で観賞していた。
ふつう花火って見上げるようになるけど、高いところで見るのでちょうど目の高さに花火が打ち上がるように見えるのだそうだ。
で、花火大会が終わって山の上のホテルに帰るんだけど、山のしたのほうはやっぱり人混みでいっぱいなのだが、
山に登ってくる人はほとんどいなかったそうだ。
そんなわけでひと気のない夜の山道を男友達数人と歩いて登っていたらしい。
街頭もまばらな山道を登りながら、ふと後ろを振り返ると遠くの街頭の下にに白い服を着た人影があるんだって。
まあ花火の帰りの人かな?と思って最初は気にも留めなかったんだけど、後ろに人がいるってわかると気になるもので、
しばらく歩いた後にもう一度振り返ってみるとちょっと近づいてきてる。
仲間の一人が「なあ、後ろにいるやつ近づいてるよな?」と言うなりいよいよ気味が悪くなってきて、もう一度振り返ってみる。
また距離が近くなっていて、その人の様子もかなり見えるようになった。白い服を着た女性だった。
でも歩き方もどうもフラフラしてるし、こんな時間に一人きりで山道にいるのってだいぶ異様だしでかなり気味悪く感じていた。
もう後ろが気になってしょうがない。
もう一度振り返ると、その女が全速力で駆け上がってくるところだった!
いい年した大の大人が全員叫びながら山を登り、振り返りもせず一目散にホテルに駆け込んだ。
で、怖いし、明るい人のいるところにいたいしでロビーでみんなで今あったことについて言い合っていたんだけど、
そいつらしき女はついにホテルには来なかった。
その道の続きってそのホテルか、お城?しかないんだけど、お城は夜やっていないし、
その女も来るとしたらホテルしかないはずなんだけどね。
【了】