【第 55 話】 蓬莱◆hB4rS4et48Vf 様
『たどり着けない聖地』
これは友人との会話を文章にしたものです。
彼は霊は一切感じない、むしろそれを楽しんでいる感じのタイプ。
ある日、いつもの居酒屋で飲んでる時に心霊の話になった…
「お前は心霊とか信じるか?」
「富士の樹海にテントを貼って、数日過ごしたら面白いかもなあ(笑)」
って本気で言ってる人間で、聞いてみるとけっこう悪さもしてた。
「霊なんて見えないから怖くないって。子供のとき夜中に墓場に行って、
お墓の前で丑三つ時にカッターを歯に仕込んで鏡を見たら後ろにヤバいモノが見えるって怪しげな儀式をきいて試したんだ」
「でも結局、何もなかったし、そのとき歯ぐきにカッターの刃が刺さって血が止まらなかったのは困ったな」
「腹が立ってお墓にオシッコかけてきてやったな(笑)」
「あと、むかしコックリさんが流行ってる時に、わざと十円玉の指を強引に、
“み・な・ご・ろ・し”って動かしてやったら、参加してた女子生徒の何人かが本当に具合が悪くなって、
その子たち一週間ほど学校を休んでたっけ(笑) 俺はそれを見て腹の中で笑ってたなー。要は「集団ヒステリー」ってやつだ」
そうやってケタケタ笑うを友人をみてこいつは一生、霊とは縁がないなって思った。
しかしふっと思い出したように彼は、
「でも…今でも何故か不思議だな~って思う出来事があるなあ…ユタって…知ってるか?」
「ユタ?霊媒師のことだろ?」
・ここからいわゆる体験談になるのです。
彼は沖縄出身で、知らない方もいらっしゃると思うので、
彼女ら“ユタ”とは沖縄の独特の霊能者の呼称です。
「巫女」とか「シャーマン」と呼ばれる人たちのことです。
まれに呪術めいた事を行なったりすると聞きました。
彼にとって「ユタ」は意外に身近な存在だったらしいですが…
小学6年生のとき、「ユタの聖地」に興味本位で行ってみたくなって、そこで何か起こったらそれを
夏休みの自由研究にしようと思い立ったんだ。
要はユタの女性たちが修行場で使っていた所なんだけど、そこって男子禁制って云われてる場所で、
地元の特にお年寄り連中は絶対に場所を言おうとしないんだ
でも色々と情報を集めて、ある程度ここだなって場所は割れたんだ、で
とりあえず計画を立てて、お金を貯めて、いざ「聖地」へ行こうって時の3日前に、
友人たちとグラウンドでサッカーをしてる最中に、ボールを蹴るつもりが地面の出っ張った所を思い切り蹴って左足を骨折してな
そのまま病院へ運ばれて、レントゲンを撮られてギブス付けられて痛み止めを処方されたけど、
じつは俺は薬のアレルギーがあって、
薬アレルギーの旨をドクターに告げたんだけど、たまたま同じ苗字の人物がいて、ぜんぜん合わない薬を処方されて、
そのショックで2日間意識不明になってな
あと5分処置が遅れてたら助からなかったと言われて…、その年はそれで聖地巡業は断念したんだ。まあ偶然だろうな。
2年目の年の、中学1年生の夏休みに、また自由研究で例のユタ聖地に行こうと思ったんだ
でも行くと決めた前日に、俺を含める家族全員が食中毒になったんだ、未だに原因は分からない、
またまた入院してしまって、夏休みラスト4日目だったし、下痢はひどいし仕方なくその年も断念した。
ま、これも偶然だろうな
3年目…中学2年生の夏休みに、今年こそは絶対に行くぞ!って決めて、また例の場所へ行こうと綿密な計画を立てたんだ
行くと決めた日の5日前に、家族で車でドライブに出かけてて俺は後部座席に座っていて、
そのドライブ中に、俺の後ろの座ってた席に横から狙い撃ちするように、ホロの付けたトラックが追突してきて、
シートベルトしてなかったから思い切りガラスに頭を痛打してな気を失って、額から血がダラダラ流れて気を失ってな、
気がついたらまたも病院のベットの上だったんだ。
2週間ほど入院して、退院の時はすでに学校が始まってから、その年もユタの聖地巡礼は断念するかたちになってしまったんだ。
4年目…中学3年生の夏休み、今年こそは何もないように、早めにきちんと計画を練ってその年は前回のこともあって、早めに計画を立てたんだ
その時は友人にも声をかけて、行こうと意気込んでた心霊好きな友人2人を誘えることに成功した。
出立2日前に、余裕があったし、俺を含め一緒にその行く友人と関係ない2人、全員5人で近くの浜辺でBBQして海水浴をしていたんだ。
その海でみんなで泳いでいて、一緒に行く2人が同時に溺れたんだ。しかも肩が付く程度の浅瀬でな…
俺ら3人は必死に救助して、浜辺に引き上げたら2人の両足首にくっきりとミミズ腫れができてた
沖縄はクラゲもいるから、それに刺されたと思ったけど、他の友人は手の跡に似てるとか騒いでたよ
そのおかげで2人ともビビって聖地行きはキャンセルしたけど、おれは一人でも行くぞ!って意気込んでいたよ
で、当日はもしやの沖縄独特の、台風が来るかもしれない天気だった
まあ大丈夫だろうと思って部屋で寝てたんだ
いきなりドーンって感じの衝撃があって気がついたら、部屋の柱が落ちてきて、
壁に穴が空いていて、屋根も一部壊れてて、それは庭のヤシの木が折れて俺の部屋だけに倒れてたんだよ
柱に挟まれ動けなくなったけど、どうにか抜け出して家から家族で祖母の家に避難してな、台風が去った次の日
ヤシの木をどかして部屋の片付けをしてたんだ。部屋には行くための準備をしていたリュックがあったんだけど
中には食料とか、衣服などを入れてて、行くまでのバス乗り継ぎ、タクシー代として6000円だったから、カンカンの中に入れてたんだ
でもなぜかリュックはあるのに中から、カンカンだけがそっくり消えていて辺りを探しても見当たらなくって、また仕方なく断念したんだ
次の年に、高校を中退して上京したから結局は行けずじまいでな…
「たしかに偶然ぽいといえばそうだが、余談があってな…」
じつは…4年目に聖地に行こうって誘った友人のうちの1人だけど、あの後すぐ家族に不幸があってな
とつぜん父親が倒れたんだ
で、介抱していた母親が疲労から卒中になって半身不随。
ちょっとして弟が家の前で突然車の交通事故
家を出た途端に、とつぜん車に跳ねられて重症でそのまま入院。
あまりにも不幸が続いてたので大騒ぎになって、なにかの呪いかと噂になってしまって、
結局ユタを呼ぼうって事になったんだ
内容はよくわからないけど、お祓いしてもらったときに、その儀式で鶏の首をはねたらしい
たぶん身代わりなんだろうな…
まあ結局、不幸は収まっんだけど働き頭の父と母は亡くなってしまった…
その後、父が隠していた借金が発覚してな、家を差し押さえという状態になってしまった
友人は借金返済のために働き詰めになってな、
3年くらい頑張ってたかな…、友人は借金返済のため頑張っていたけど…あと2、3ヶ月で差し押さえ期限が近づいてたんだけど
その最中に、そいつは車で事故死。たまたま助手席に座っていたらしいんだけどな
幸か不幸かそいつは生命保険に入っていて、おかげでその金でどうにか借金は返済できたんだ
でな…その依頼したユタってのが、例の聖地で修行を積んだ人物だったんだ……
【了】