【第 87 話】 会計◆QAI42rkje6 様

『引っ越し』

 

これは従姉から聞いた話です。
従姉が就職で引越しをしたんですけど、その部屋が『出る』部屋だったんです。
引越しが終わった夜、彼女がくたびれ果てて寝てたらいきなりドンって人が伸し掛かってきてびっくりして目を覚ましたそうです
彼女は最初、上に飛び乗ってきた感じがあまりにもリアルだったので痴漢か泥棒かと思ったらしいんです。
しかし、部屋が真っ暗だったので、何者かが馬乗りになっているのはわかっても、姿までは見えなかった。
声を出したり、暴れたりすればかえって危険なことになるんじゃないか・・・彼女がそう躊躇っていると、
フフッと、女の含み笑う声がしたんです。
えっ、と思ったのと同時に人の乗ってた感触が消えて、彼女は飛び起きて灯りを点けたんですけど、
部屋には誰もいないし、戸締りだってしていました。しかも以来、それが毎晩続くんだそうです。
それで、彼女の知り合いにたまたま霊能者というかそういうことに強い人がいたんでその人に相談したんです。
そしたらその人がお札をくれて、「これを布団の四隅の下に敷いて寝なさい」って言ってくれました。
彼女は言われたとおりにして休みました。その頃は彼女はすっかり不眠症になっていて、
お札を敷いたもののやっぱり眠れなかった。

 

そしたら夜中、足元かの方から足音が聞こえてきたんです。そっちは壁しかなかったのに。
まるで隣の部屋から壁を通り抜けてきたみたいに人の足音がして、それが布団の足元で止まるんです。
彼女は身構えたんですけど、この日はその人、飛び乗ってこなかったんです。
暫く足元に立って、まるで困ってるみたいにじーっと彼女の方を見てるんです。
それから布団の周りを歩き出したそうです。まるで様子をうかがってるみたいにして、何度も何度も。
でも暫くして、ぱったり足音がしなくなったんです。彼女はほーっといきをして・・・
そしたらすぐ枕元から、はっ!、ってバカにしたような声がして・・・

「こんなの効かへんわ!」って。

従姉はその後すぐに引っ越したそうです。

【了】