【第 84 話】 白孔雀 ◆EiiyoouYFo 様
『無題』
友人Yさんの話。
Yさんがまだ学生だった頃、あこがれの先生がいた。K先生と呼んでおこう。
K先生は奥さんと離婚して娘が一人いる。
でもそんなことはYさんにとって気にならないことだった。
ある日Yさんは思いを告白するためにバレンタインのプレゼントを用意した。
勿論K先生に渡すために。
結局その日はK先生には会えず、明日こそ渡そう…Yさんはそう思っていた。
その夜、Yさんは夢を見た。
ある人がお坊さんのような人にしきりに頭を下げている。顔は見えない。
「そこをなんとか…」
お坊さんは無言で、それはできないとばかりに首を横にふっていた。
目が覚めた後、Yさんは夢の中のお坊さんは自分のご先祖様ではないかと思ったそうだ。
そして頭を下げていた方はK先生のご先祖様だとも。
その夢を見たとたん、YさんのK先生へのあこがれは嘘のように消えてしまったとか。
Yさん曰く「だってあの後もっと素敵な人が現れたのよ」
でも、もしあの日YさんがプレゼントをK先生に渡していたら、あの夢を見ていなかったら
Yさんの人生はどうなっていたんだろう。
【了】