【第 67 話】 かーん ◆UiIW3kGSB. 様

『作り物の怪』

 

私が小学生の頃学年内で結構長い怪談・心霊ブームがきた。
放課後PC室に忍び込んで色々やらかしたのもこの頃の話である。
びっくり系のフラッシュや読んでも読んでもなくならない怖い話。
インターネットのおかげで私たちは実にたくさんの怪談やオカルトな知識を得ることが出来た。
いつの間にか読むだけ、見るだけで物足らなくなっていた私たちは自分達で実践する方向にシフトしていっていた。
こっくりさんやトイレの花子さんの呼び出し…みんなが持ち寄った情報を片っ端から実践していた。
しかし大抵は空振り。こっくりさんで少し不思議な体験をした程度だった。
いつの間にか実践からまた怖い話を集めることに熱を出した私たちはとんでもないことをしてしまう。
始めは学校のすぐそばにある児童館に併設された三角公園で遊んでいた男の子が事故死して彷徨っている…
という実際にそんな事があれば怪談として伝わる前に学校から注意喚起が広がるようないかにも創作といった話でした。
それではつまらないと私たちは「アレンジ」を加えてしまったのです。

この話を聞いた人は一週間以内に7人にこの話をしないと男の子が足を奪いにくる

この一文を言うだけでみんなの反応は180度変わってくる。このニセ怪談は瞬く間に学校中に広がっていた。
私たちはその結果に大いに満足していたのだが次第におかしな展開に広がっていった。

「この話をきいたAちゃん、信じてなくて7人に言わなかったから骨折したんだって」
「B君は3人からその話を聞いたから21人にその話しなくちゃいけなくなって怖くて学校休んじゃったよ」
7人に言わなくたって男の子は来ない。だって私たちが付け足したものだから。
それなのにだんだんと足に不調を抱えた子が増え始めたのだ。
校庭で鬼ごっこをしていて転んでしまったのも怪談で足を挫いたのもすべてその男の子の仕業となっていた。
こうなってしまっては嘘が嘘でなくなってしまう。
そこで素直に全てを白状すれば良かったもののまた余計な事になってしまったのだ。

 

一週間以内に言えなくても三角公園を三周すれば呪いは解ける

それを人伝に聞いた時には流石に信じる人はいないだろうと笑ってしまったのだが
暫くの間それほど広くない三角公園は小学生でいっぱいになっていた。
そして三角公園を三周しない私を一緒に「アレンジ」をした友人までもが心配をし始める。
そうなるとなんだか私も右足が痛い気がしてくるのだ。
それまでそんなデタラメと切り捨てていた子まで足を掴まれたなんて言い出して
まだノロイをといていない子がみんなから責められるおかしなことになっていた。
しかし偽物のノロイに屈するのは負けた気がして意地でも三角公園には行かないと決めていた。

結果を言うと、私はノロイに勝てず、
運動会の組体操中、ピラミッドのいちばん上に上がる最中に逆側から崩れ私は足をひどく捻挫した。
それでも行かない私の代わりにみんなが三角公園を三周し無事ノロイは解けたようだが改めて怪談の力を思い知ったのだった。
小学生のトンデモ理論と怪談は抜群に相性が良いようだ。

【了】