【第 65 話】 雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM 様

『挨拶』

 

知り合いの話。

彼女は山菜を採るため、近場の山へちょくちょくと出掛けている。
途中にいつも腰を下ろして休憩している石があるのだが、そこで休んでいると
「やぁこんにちは。今朝も元気そうですね」
決まってそう挨拶をしてくる何者かがいるのだと。
しかし、周りには人っ子一人見えない。

彼女はいつものように
「はい、こんにちは。そちらも元気そうですねぇ」
と何もいない空中に挨拶を返してから、山の奥へ向かうのだそうだ。

声の主については、彼女は特に気にしていないという。
「姿が見えないのはアレだけど、声の調子からすると、悪いモノじゃないよぉ」
そう言って笑っていた。

【了】