【第 50 話】 抜歯太郎 ◆ZMA13fr.0s 様

『おもちゃの電話と消えた訪問者』

 

第18話と少し似たことを私も体験いたしました。
15年以上前の話になりますが、
私の曾祖母(祖母の母)がなくなった時に起こった
不思議な現象のお話をいたします。

曾祖母が亡くなる数日前から危篤の知らせが入っていましたが
曾祖母の入院先が北海道、祖母は私達と長崎県に住んでおり、
遠方であることと、経済上の事情もあいまってすぐに向かうことは出来ませんでした。

そんなおり、17時頃、学校から帰った私が一人で留守番をしていると、
突然、物置部屋に使っている部屋から
「プルルルルル」「プルルルルル」と、電話に似た音が突然聞こえてきました。

家族の携帯電話がなっているのかと思い、
見に行きましたが、それらしいものは見当たりません。

「プルルルルル」「プルルルルル」

そもそも物置部屋に携帯電話があることがおかしいのですが、
音のする場所を探っていると、ダンボールの中で音がしています。
中を開けると弟が昔遊んでいた携帯電話型のおもちゃが鳴っていました。

何かの拍子に、ボタンが押されたんだろうな・・・そんなことを思いながら
ボタンを押して電源を切ろうとしたのですが、音が鳴り止みません。

???困っていると

 

ガラガラガラと、隣の居間の窓が開けられた音がしました。
「Sちゃんいるかい?」とお年寄りの声が聞こえました。

Sちゃんとは祖母の名前で、町内会の人が用があって訪ねてきたのかと思い
慌てて居間に向かったのですが、誰もおらず、窓が開けっ放しになっているだけでした。。
外を伺っても誰も居ません。

おかしいな、と思いながら物置部屋に戻ると、さっきまで鳴っていたおもちゃの電話が止まっていました。

なんだったんだろう・・釈然としませんでしたが
おもちゃの電話をダンボールに戻そうとしたところ、ぞっとしました。
おもちゃは電池で動く仕組みなのですが、電池が入っていなかったのです。

ちょうど、祖母が帰ってきたので
先ほどのおもちゃと消えた訪問者の話をしました。

「実はね・・」

親戚から、先ほど曾祖母が亡くなったとの知らせがあったばかりだったそうです。

「きっと私に会いに来てくれたんだろうね」

それ以後、おもちゃの電話が鳴ることは2度とありませんでした。
あれは、虫の知らせというやつだったのでしょうか。

【了】