【第 42 話】 ぬこ ◆RMw3.cMGUE 様

『足が欲しい 二』

 

同じ先輩がやはり小学生の頃に体験した話。
その日は風邪気味で学校を休んでおり自宅の2階にある自室で布団にくるまっていた。
ぼんやりと外を眺めていると家の前にある道に喪服のような黒い服と帽子をまとった髪の長い女性が俯いて立っていることに気がついた。
何故かその女性のことが気になり彼女はベランダに出ていった。(なぜそのようなことを考えたのか後になって振り返ってみてもよくわからないという。)すると彼女がベランダに出ると同時にその女性がふっと顔をあげた。
その顔は雪のように白かった。比喩ではなく本当に肌が真っ白だったのだ。
そしてつぶやいた。そのつぶやきは離れているはずの彼女にもはっきり聞こえたという。
『足が欲しい』
気がつくと彼女はベランダで倒れていた。時計をみると気を失った時から2時間ほどたっていた。

ちなみにその先輩は今でも五体満足で生活している。また20数年の人生の中で手足を失うような病気や事故が起きたこともないという。
彼女が幼い頃に遭遇したものがなんだったのかは未だにわからないそうだ。

 

【了】