【第 34 話】 釣師官兵衛 ◆vW7zauZqAA 様

『冬の波止での話』

 

そこの波止に到着したのは21時くらいになる。車が1台停まっていたので、先行者がいるようでした。
ギャフもだしショルダーバッグを肩にかけロッドを持ち波止めを歩き始めた。
波止めは100mくらいの長さで真ん中から先端が実績があったため、真ん中くらいから始めた。
『ジッジッ』『ジッジッ』小気味よく私のロッドをしゃくる音が響いた。ふとすると、すぐ横で『ヒュンヒュン』ロッドが風を切る音が聞こえた。
あっ先行者の方だなと思っていると、隣から話しかけられた。
先行者『どうですか、釣れましたか?』
私『今、きたばかりなので・・・』
私『そちらはどうですか?』
先行者『今いたばかりですよ』
会話を交わしながら釣りをしていました。
次の波止移動しようと思い、
私『そろそろ行きますわ。頑張ってください』と声をかけ、
先行者『私は後少ししたらいきます。気をつけて』と返ってきました。
私はその波止めを後にした。

数日後、その波止で夜釣り中に海に落下し亡くなられた方がいることをニュースで知りました。私の隣で釣りをしていた方のようでした。
そう言えば会話の中で『今いたばかりなので』って『今逝ったばかりなので』と言っていたんですかね?

【了】