【第 30 話】 サンズリバー ◆QNxpn.SauU 様

『ばぁばと佛』

 

僕の亡き祖母が元気だった頃の話しである。

祖母は、自分の子二人を病気で失い、気丈に振る舞いながらもどこか淋しげだった。
それ故か、とても信心深く、自分の命以上に佛様を大切にし、墓参りも欠かさない人だった。
そして更に、明晰夢も度々見ていたようだった。必ず自分の亡き子や兄弟が出てきていたようだ。
そう、感も勘も鋭かった。

ある真夜中、祖母が突然起きて仏壇の前に座った。「佛様が起こっている!」と叫んだ。
今の仏壇の祀り方が気に入らないと、ご先祖が伝えたと言う。
認知症はなく、1ヶ月に20句近い俳句を詠んでいた程だから、間違いないだろう。

僕が休みの日にホームセンターで壁紙を買い、仏壇周りをリフレッシュした。
祖母は大層喜び、僕も嬉しくて記念に写真を撮った。
しかし……、そこには白い靄がかかり、ハッキリと写っていないのだ。
試しに別の場所で撮影したが、鮮明に写った。一瞬ゾクッとした。
その写真はお蔵入りである。祖母にも見せないままだった。

毎朝毎晩と供養を続けて先祖の御霊を慰め、盆・正月・彼岸もきちんと行っていた。

それから数年が経ち、一昨年祖母は大往生した。
最後の約束は、僕が佛様を受け継ぎ祀り続けるという事だ。
勿論、一日たりとも欠かしていない。それよりも、更にグレードアップした程だ。

昨年、僕はタブレット端末を新しく購入した。
そして再び仏壇を撮影した。そこには……、白い靄がかかっている。
あの時と同じようにしたが、結果は全く一緒だ。
いつも仏間兼居間は澄んでいるし、離れた所からも肉眼ではハッキリ見えている。
写真だけが、どうしても靄に包まれるのだ。

もう、仏壇の撮影は封印した。二度と写す事はないだろう。
そして、この事は解明されない方が良い。
もう決して失礼な事はしないからね、ご先祖様…。
そして、どうか見守ってください。僕がそこへ行く迄ずっと……。

【了】