【第 25 話】 雷鳥一号 ◆jgxp0RiZOM 様

『あついよー!』

 

知り合いの話。

彼女が以前住んでいた町には、小さな公園があった。
家の近所にあるその公園は、夕暮れになると焦げくさい臭いがしていたという。
と言っても、臭いを感じていたのは、家族の中でも彼女だけだったらしいが。

ある夜、遅い時間にそこを通りかかると、これまでにないほど強い焦げ臭がした。
吃驚して公園内を見ると、真っ黒焦げの人型が、よろよろとこちらに向かってくる。
所々に赤い燦めきが見えるのは残り火であろうか。
あまりのことに、彼女は立ち竦んでしまった。

「あついよー!」

人型はいきなりそう叫ぶと、彼女に向かって走り出した。

必死で逃げ出したそうだ。
家に辿り着き、わんわんと泣く彼女に驚いた家族は、公園へ確認しに行ってみた。
何も怪しいモノの姿はなく、焦げた臭いも感じられなかったという。

その後すぐに別の町に引っ越したので、その公園が今どうなっているのかは、
家族の誰も知らないのだそうだ。

【了】