【第 17 話】  ヤプール ◆v0h8dExI/ytY 様
『気まぐれなカーナビ』

 

大学時代に友人のSから聞いた話。
お盆の少し前、彼の地元の友達が遊びに来たとき。

Sの友人の一人が、近くに最近テレビで紹介された心霊スポットがあるとの情報を入手し、
SとSの彼女、地元友人2人の4人でその心霊スポットへ肝試しに行くことにしたそうだ。

友人の一人がだいたいの住所まで調べてきたので、Sの車のカーナビに目的地を登録して出発した。

だがこのカーナビ、かなり旧式のもので、新しい道がまだ登録されてなかったり古い道がまだあったりと、
かなり使い勝手の悪いものだった。
それでも最終的につけばいい、という考えのSは使い続けていたが、目的地到着までかなり寄り道させられることも多かった。
さらには電波も入りずらいのか、ちょっと山奥に入るとそのままフリーズ状態になることも多かった。

そしてその日も、山に入るとすぐにフリーズしてしまった。
一応地図も持ってきたものの、初めて行く場所だし道も複雑だしでかなり迷ったそうだ。

30分ほどさまよったとき、ふいにカーナビが
「目的地周辺です、音声案内を終了s目的地周辺です、音声案内を終了s…」
と、壊れたようにしゃべりだした。さっきまではフリーズしたままだったのに。
ほかの3人は驚いていたが、Sは、「まぁもう寿命だから、こんなこともあるか」程度にしか考えなかったそうだ。

車を止め、周囲を見回すと、前方に廃墟らしき影が見えた。
おそらくここが目的地だろうと思い、4人は中を探索することにした。
Sの彼女と友人の一人はそれぞれカメラを持ち、何かうつりそうな場所を見つけては写真を撮っていた。

そして、ある程度進んだところで、カメラのチェックをしていたSの彼女が
「あ、これやばいかも…。」とつぶやいた。

 

なにがやばいんだよ、とSたちが近づこうとすると、彼女は出口に向かって一目散に逃げて行ってしまった。
何やらやばい空気を察した彼らは彼女を追いかけ、そのまま車に乗り込みその場を後にしたそうだ。

「…で、この場所に一緒に行ってほしいと?」

Sの彼女は逃げる時にカメラを落としてしまい、それを一緒に見つけてほしいとSから依頼が来た。
Sの彼女はもうあそこに行きたくないそうだし、地元の友人たちは帰ってしまい一人で行くのも気が引けるらしい。

「これがそのカメラなんだけど…。」
Sがその廃墟で撮られた写真の一枚を見せてきた。
ぶっちゃけ、ガッツリよからぬものが写っていてカメラどころではなかったが、Sは触れなかったので私もそっとしておくことにした。

翌日、今度はちゃんと道順を調べてきたSとともに例の廃墟へ向かった。
一応カーナビにもダメもとで目的地設定したが、今回はあっけなく到着した。

しかし、到着したSは第一声「…違う。」と言い放った。
「俺が来たのは、この廃墟じゃない…。」

暗くて見間違えたんじゃないの?という私にSは一枚の写真を手渡す。
「あの夜とった廃墟の全体像だ。全然違うだろ…。」

目の前にある廃墟は二階建ての木造のこじゃれた家。
しかし、写真に写っているのは、暗くてはっりは見えないがどうもコンクリート造りのようだ。
少なくとも、今目の前にある家とはまるで別物。
辺りを見渡すが、ほかに建物らしいものは見当たらない。

結局その場所はわからずじまい。カメラも当然見つからず、写っていたものがなんだったのかも結局不明。

あの気まぐれなカーナビは、あの夜彼らをどこに連れて行ったんだろう…。


【了】