【第 11 話】 白孔雀 ◆EiiyoouYFo 様
『金縛り』

 

今年になってからの話。

その日いつものように布団で寝ているとキ―ンと音がして体が動かなくなった。
隣に寝ている夫を起こそうとしたが声が出ない。金縛りだ。
もがいていると『何か』が寄って来る気配がした。
私は必死で目を閉じ、その『何か』を見ないようにした。

目は閉じていたのだが、私はそれを人のようなものだと感じた。
なんというか、寝ている自分とは別の眼で周囲の映像をとらえている、そんな感じである。

近づいてきた物の背丈は子供くらいで、顔はわからない。
黒い影のようなそれは、私の顔をのぞき込むと、せかせかと布団の周りを落ち着きなく歩きはじめた。
早くどこかへ行ってくれないだろうか…動かない体でそればかり考えていた。

やがて朝が来た。いつの間にか気配は消えて金縛りは解けていた。
私は夫に「昨日怖い夢を見てあなたを起こそうとしたのに起きなかったのよ」と言った。
でもそれ以上のことは言えなかった。
金縛りだ、幽霊だなんて笑われてしまいそうで。
そして私は気配の主に心当たりがあった。なんだか遠方に住んでいる叔父に似ている気がしたのである。
叔父は最近足を悪くしたそうだ。単なる気のせいだと思いたいのだが…。

【了】