【第 86 話】 まんじゅう ◆PP2Ugyol5s 様

『千葉県S駅(其の二)』

 

現在は改装が済み、明るくお洒落な雰囲気の駅ですが、以前は怪しげな話をよく聞きました。

S駅には地下1階から地上2階まで上がれるエレベーターがあります。どの駅にもあるような至って普通のエレベーターです。

ある日、Fさんが1階から2階に上がろうとそのエレベーターに乗ると、地下から乗った母娘と乗り合わせました。

娘は中学生くらいで、Fさんの娘さんと同年代くらい。母親の方はFさんより少し年上でしょうか。

2人を背に操作盤の前に立ったFさんに、後ろの会話が所々聞こえてきました。

「このS駅って幽霊が出るんだって」娘のそんな言葉に母親が「えぇ本当?」などと答えており、Fさんも、
そういえばこの駅何だか雰囲気暗いのよね。と思いながらエレベーターが着くのを待ちました。

2階に着いたエレベーターの開ボタンを押し、母娘が降りのを待ったFさんですが、2人が降りる気配はありません。

自分に気を遣っているのだろう、と思い、先に降りる様促そうとしたFさんは後ろを振り返りました。

しかしエレベーターの中はFさん1人だけ。背後にいた母娘の姿はありませんでした

 


【了】