【第 82 話】 白孔雀 ◆EiiyoouYFo  様

『よかったね』

 

数年前の話。いい話系なので苦手な方はパスして下さい。

先輩からバイトの話を貰った時のことです。
ちょうど前のバイトを辞めたばかりで、次のバイトを探していた私はその話に飛びつきました。
辞めた時期が悪かったのかあまり募集がなくて、いろんな方に頼んでもなかなか見つからなくて…という状況でした。

行ってみたらとても条件の良いバイトだったんです。場所は駅から近いし時給も良いし。
内容といえば前の方(Aさんとします)の仕事を引き継げば良かったんです。
そんな条件の良いバイト、なぜこんな中途半端な時期に辞めるんだろうと思いましたが
理由はすごく単純なことでした。
私を案内してくれたAさんのお腹が大きくて…つまり妊娠されて仕事を辞めることになったんだそうです。
聞いてみるとAさんもかなり次のバイトの人を探してたそうなんです。
困っているうちにお腹も大きくなっていって…そしてやっと私が見つかったそうなんです。

そのせいでしょうか。初めてAさんと会った時

ママ、よかったね

と子供の声が聞こえたんです。少年の。
でもその場には女性しかいなかったし、私にだけ聞こえていたようなんです。
私には霊感がないのに、とても不思議な体験でした。

数ヵ月後、Aさんが無事に出産したと聞きました。勿論、男の子でした。

【了】