【第 59 話】 いそべ ◆8JXCKM3oNw 様

『観葉植物の話』

 

あるとき、父と母と私、家族3人で近所の大型スーパーに行った。
ちょうどなにかのキャンペーンをやっていて、1人1つずつ観葉植物がもらえた。
3人それぞれの分として、リビングの日当たりのよいスペースに並べて置いた。

1週間後に母が倒れ、まもなく死んだ。
持病もなかった母との、突然すぎる別れだった。
時を同じくして、母の植物は枯れた。
母が倒れる直前まで青々としていた葉っぱが、見る見るうちに枯れた。

それからしばらく経ち、今度は父の植物に元気がなくなってきた。
やがて、父から打ち明け話をされた。
交際している女性がいるという。
父は家族ではなくなった。
父の植物も、すぐに枯れた。

家族がいなくなるたびに、家族でもらった観葉植物は消えていく。
それとも、自分自身が他のもののエネルギーを吸い取ってしまっていたのだろうか。
悪いオーラのようなものを、自分の周囲にまき散らしてしまっていたのだろうか。
1つだけ残った私の観葉植物は、部屋の片隅でぽつんとしながらも、今でも不自然なほどに元気で成長を続けている。

【了】